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イミュニティ試験
(Immunity Test)

イミュニティ試験は、装置の電磁妨害に対する耐性を評価するために、 装置が受けることが想定される電磁妨害をシミュレートする妨害に被試験装置を曝し、 その挙動を観察することによって行なわれる。

装置からのエミッションに関しては 多くの国で古くから法的な規制 (例えばアメリカの FCC 規制) が行なわれてきたものの、 イミュニティに関しては状況はかなり異なる。 欧州においては、EMC 指令のもとに イミュニティに関してもエミッションと同等の規制が行なわれているが、 多くの国 (日本やアメリカを含む) はまだそのような体制とはなっていない。 しかし、電磁干渉による問題が増加していることもあり、 将来は他の国でも欧州と同様の基準への適合が要求されることになるかも知れない。

IEC で標準化されている主なイミュニティ試験は、以下のようなものである:

静電気放電 (IEC/EN 61000-4-2)
人体やその他の帯電した物体から装置への直接の、 あるいは装置の近傍で発生する静電気放電をシミュレートする。

基本的に、装置の使用に際して人の手が接近する可能性がある 全ての箇所が評価の対象となり、 導電性の部分に対しては接触放電試験が、 非導電性の部分に対しては気中放電試験が適用される。 装置の近傍で発生した静電気放電の影響は、 装置の近傍のグランドプレーンや垂直結合板への放電によって評価される。

放射無線周波電磁界 (IEC/EN 61000-4-3)
無線送信器からの干渉をシミュレートする。

試験は、所定の周波数範囲 (典型的には 80〜1000MHz であったが、 1GHz 以上の周波数の利用の増加に応じて より高い周波数までの試験が求められるようになっている) で掃引される、振幅変調された高周波電磁界を放射することによって行なわれる。

電気的ファーストトランジェント (IEC/EN 61000-4-4)
誘導性負荷のスイッチングやリレーのチャタリングなどに伴う 電力線や信号線上のパルス性の高周波妨害をシミュレートする。

装置への電源やその他のケーブルが評価の対象となる。 妨害信号は、それが適用可能であれば結合/減結合ネットワーク (CDN) を用いて、 さもなくば容量性結合クランプを用いて注入される。

サージ (IEC/EN 61000-4-5)
雷や電力のスイッチングなどに伴う電力線や長距離信号線 (電話線など) 上の 比較的低周波で高エネルギーの妨害をシミュレートする。

装置への電源やその他のケーブルが評価の対象となる。 サージは、結合/減結合ネットワーク (CDN) を用いて注入される。 このサージ波形は、 コンビネーション波形と呼ばれる。

伝導性無線周波妨害 (IEC/EN 61000-4-6)
電源やその他のケーブルに対する無線送信器からの干渉をシミュレートする。

基本的には無線信号による干渉の評価を目的としているものの、 この試験は所定の周波数範囲 (典型的には 0.15〜80MHz) で掃引される 振幅変調された高周波信号を 結合/減結合ネットワークや結合クランプなどを用いて ケーブルに注入することによって行なわれる。

電源周波数磁界 (IEC/EN 61000-4-8)
近傍の大型変圧器や電力ケーブルなどからの 50〜60Hz の磁界をシミュレートする。

磁界の影響を受けにくいと判断できる装置は、 この試験の対象から除外される場合がある。 試験は、低周波交流電流の流された誘導コイルの内側に 装置を置くことによって行なわれる。

電圧ディップ、及び瞬時停電 (IEC/EN 61000-4-11)
電源電圧の一時的な低下や停電の影響をシミュレートする。

試験は、装置に供給する電源を、 所定の時間、所定の割合で低下させることによって行なわれる。 通常、短時間の電圧ディップに対しては装置が動作を継続することが、 長時間の電圧ディップに対しては電源電圧が正常な範囲に復帰した後に 装置が正常な動作を再開することが要求される。

IEC/EN 61000-4 シリーズは試験方法を規定するものであり、試験のレベルや 合否の判定のために適用すべき動作基準は 別の規格で規定される。 欧州整合規格としてリストされている イミュニティ規格の一部を以下に示す:

EN 61000-6-1
(EN 50082-1)
住宅、商業、及び軽工業環境のための一般イミュニティ規格
EN 61000-6-2
(EN 50082-2)
工業環境のための一般イミュニティ規格
EN 55014-2 (CISPR 14-2) 家庭用機器、電動工具、類似機器のための製品群イミュニティ規格
EN 55020 (CISPR 20) 放送用受信器のイミュニティ
EN 55024 (CISPR 24) 情報処理機器のイミュニティ
EN 61326 測定、制御、及び試験所用機器の EMC

各試験に対する代表的な試験レベルと 動作基準は次のようなものである。

基本規格 現象、及びポート 試験レベル 動作基準
住商業環境 工業環境
IEC 61000-4-2 静電気放電
・ 接触 ±4kV ±4kV B
・ 気中 ±8kV ±8kV
IEC 61000-4-3 放射無線周波電磁界 (80〜1000MHz, AM 80%, 1kHz)
・ 筐体 3V/m 10V/m A
IEC 61000-4-4 電気的ファーストトランジェント
・ AC 電源 ±1kV ±2kV B
・ DC 電源 ±0.5kV ±2kV
・ 制御/信号 ±0.5kV ±1kV
・ 機能接地 ±0.5kV ±1kV
IEC 61000-4-5 サージ
・ AC 電源 (対地) ±2kV ±4kV B
・ AC 電源 (線間) ±1kV ±2kV
・ DC 電源 (対地) ±0.5kV ±0.5kV
・ DC 電源 (線間) ±0.5kV ±0.5kV
IEC 61000-4-6 伝導性無線周波妨害 (0.15〜80MHz, AM 80%, 1kHz)
・ AC 電源 3V 10V A
・ DC 電源 3V 10V
・ 制御/信号 3V 10V
IEC 61000-4-8 電源周波数磁界
・ 筐体 3A/m 30A/m A
IEC 61000-4-11 電圧ディップ、及び瞬時停電
・ AC 電源 30%, 0.5周期 B
60%, 5周期 C
>95%, 250周期 C


by Tom Sato, 2001-09-09