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翻訳: T.Sato
昨年、EMC Industries Association (www.emcia.org) は私を会長に選出し、 その決定にまだ失望していない (だが、まだ始めたばかりである)。 EMCIA のことを聞いたことがないならば、 おそらくはそれがメンバーの利益のために運営されており、 世界の他の部分に関する限り控えめに振る舞ってきたためである。
だが、最近、EMCIA は、正しく扱われていない様々な EMC の問題があり、 全ての利益のため、その解決のための役を演じようとすべきであると判断した。 扱うことを決めた最初の問題は、PLT ――BPL (broadband-over-powerline)、 あるいは PLC (powerline communications) としても知られている―― を取り囲む状況である。
家の中で、専用の Ethernet ケーブルの代わりに、 壁の中の主電源ケーブルを用いて通信する Ethernet アダプタを用いているならば、 あなたは PLT を用いている。
いくつかの背景： 製品のための CEマーキング指令を伴う単一欧州市場は、2つの理由から作られた:
さて、項目 i) は達成されたが、ii) は達成されていない。 規制の執行にはコストを要し、 ほとんどの欧州連合 (EU) 加盟国は、どうやら、 執行活動をあまり行なわないことで費用を節約しながら 加盟の経済的利益を享受しようと決心したようである。
これは、経済的利益のために両親との同居を選ぶが 家事を手伝おうとしないティーンエイジャー (混乱させるようだが、今は30歳以上かも知れない) になることの、政治的同等物である。
我々の多くが個人的な経験から知っているように、 そのような状況は通常は永遠には続かず、それは EU についてもそうである。
2005年に、EU で実際に供給されている製品の 30〜50% が EU 指令に従っていないことが分かり [1]、 そのような「ただ乗り」が 15% を超えると 社会自身が崩壊する危険があることを社会学的研究が示していることから、 欧州委員会 (EC) を大いに心配させた。
これは、EU の CE マーキング・アプローチの、その発足以来の最初の変化 ――-2008年の、認可と市場調査に関する EU 規則 765―― をもたらした。 2010年1月1日以降、「規則 765」は、 加盟国が国内での EU 指令の執行のための 少なくとも規定された最小限の努力を行なうことを求め、 彼らは実際にその割り当てをこなしていることを示すデータを 提出しなければならなくなるであろう。
従って、EC の一部が製品の適合性の欠如についての心配で忙しく、 その別の部分 (DG Enterprise) が PLT ――許容できない干渉からの無線スペクトラムの保護を意図している EMC 指令のもとで通知された EMC 規格への適合に近付いてさえいないテクノロジ―― の使用を奨励することで問題を加えることに忙しいというのは、 非常に皮肉なことである。
PLT の使用を許容するために DG Enterprise が与えた最初の正当化は、 それが、特に追加のケーブルを引くことが非常にコストを要する遠隔地への、 広帯域インターネット・サービスの提供に関する競争をもたらす というものであった。
主電源ケーブルが既に存在しているのに、 なぜそれをデータを運ぶために使わないのか？ 多数の調査やフィールド・トライアルでしっかりと確立された、その理由は、 主電源ケーブルはデータの通信のために必要となる MHz の周波数のために 非常に良いアンテナとなり、 また主電源上のノイズ全てのせいで データはその上を非常に高いレベルで送られなければならず、 PLT はその信号を短波無線通信周波数帯 (HFスペクトラム、あるいはHF周波数帯として知られている) 全体に 放送することになることである。
これは「アクセス PLT」として知られているが、商業的に成功しておらず、 今は他のテクノロジの方が将来性が良いので、離陸しそうにさえない。 だが、PLT は、 部屋から部屋への HDTV の分配のためのニッチが見付かった、あるいは 壁や床での 2.45GHz の減衰が大きすぎる場合の Wi-Fi の置き換えのための、 屋内での高速データの配送にも用いられる。
アクセス PLT はある程度の政治的正統性 ――これが HFスペクトラムの保護に留意する人々に アピールするかも知れないと誤解されてているが―― を持つが、 (人々をカウチポテトにする政治的理由があると信じない限り) 屋内 PLT にはいかなる政治的正統性もなく、 それでも DG Enterprise はそれを支持し続けている。
多くのアマチュア無線家の趣味を損なうことに言及しなくても、 家中に追加のワイヤを引かなくても良くするだけのために HF スペクトラムにごみを撒き散らし、 明らかにされていない困難とコストを BBC、NATO、MOD などにもたらし、 大規模な災害に際して大きな安全上の利益を持つとともに インターネット・アクセスを使用できない人々のための 代替の放送メディアを与える天然資源を損なうのか？ それは公平な取引きとは考えにくい。
EMC Journal の第80号と第82号 (2009年1月、及び5月) の Tim Williams の素晴らしい分析、 第81号 (2009年3月) の Richard Marshall の記事、 そして同じ二人の独立した EMC 専門家によるこの号の記事で、 PLT と試験規格に関する豊富な技術的詳細を見つけられるであろう。
EMC Journal のウェブサイト、www.theemcjournal.com/plt にポストされた、 PLT に関する豊富な歴史的文書もある。 ADDX と DG Enterprise のあいだの書簡を読むことを推奨する ―― 私自身、そのように良く書かれた技術的に満足な質問を読んだことがなく、 またいずれの質問を扱うこともできず、意味のある技術的内容を完全に欠いている、 そのように横柄で、言葉を濁した、 偏った回答を読むことは想像だにしたことがなかった。
この素晴らしい資料全ては、この短い記事で、EMCIA の PLT についての懸念を、 以下のような一般的な、より感覚的なアプローチで議論する自由を残す。
これは、小さい村の全ての家の主電源ノイズ・エミッションの合計を、 屋内の１箇所で主電源配電系統に注入したようなものである！ そして、勿論、これは街の中の、あるいは大きな都市の中の、 それぞれの家や集合住宅で生じ得ると考えられる。
PLT デバイスが HF スペクトラムの大部分を覆い、 ほとんど常にオンであるということを基礎として、 その値はそれぞれの家の１箇所だけでも、 小さい街の全ての家の主電源ノイズを注入するのと同等な、 エミッション限度に丁度適合する 100,000個の製品に近いと推測する、 全く妥当であるように見える技術的主張を見たことがある。
研究の一部は、 グレーター・ロンドン全域をカバーするアクセス PLT システムは プリマス [訳註: ロンドンから 300km 離れた都市] までに至る地域の HF 周波数帯のノイズ・フロアを顕著に上昇させるであろうことを示すが、 他はモスクワでも検出できるであろうと主張する。
それらは、PLT 製品の近くでは、 半径数百メートルにわたって HF 受信が不可能となり得ることも示した。
日本でのフィールド・テストは、これらの予測が不合理ではないことを、 そして単一の PLT システムが 219km までの距離での HF 周波数帯での無線天文にも干渉し、 その高調波が 12km までの距離で UHF に干渉し得ることを見出した。
HF 周波数帯は、安全、国家安全保障、 そして国防への影響を持つ重要な通信に用いられており、 「通常」の通信と無線通信全て (携帯電話と緊急サービスの独自のシステムを含む) が駄目になった ニューヨークの 9/11 とボクシングデー津波の双方への対処で かけがえがないと証明された。 従って、HF 周波数帯のノイズ・フロアの上昇は 非常に深刻な安全への影響を持ち得る。
主張1: 我々の製品は改訂版の EMC 規則に従っており、 その製品は第三者の認定試験所で試験された。 その試験は、その製品が用いられそうな状況を模擬して行なわれた。
反論1: その適合宣言書は試験所が用いた試験規格として CISPR/I/89/CD を参照している。 だが、これは整合規格ではなく、 従って EMC 指令への適合の推定を与えるために用いることはできない。
さらに悪いことに、それは広く (そして痛烈に) 批判され、 その後で IEC ウェブサイトから引き上げられた、委員会のドラフトに過ぎない。 それは完全に評判を落とした文書である。
測定した時の実際のエミッションは、 該当する整合規格で定められた最大限度よりも少なくとも 30dB 高い。 EMCIA の誰かが訪れたことのあるどの EMC 試験所で測定しても、 疑いなく「不適合」のレポートをもたらすレベルである。
主張2: 顧客と執行機関も我々の製品を見て、 EMC 規制への適合に関して試験されていると考えた。
反論2: 欧州全域での接触から、我々はこの主張が真ではない、 あるいは少なくとも意図的に誤解させるものであると理解している。 そう、彼らは「我々の製品を見た」かも知れないが、 EMC 指令への適合を公式に裏書きしていないのは確実である。
主張3: 我々の製品設計は、 電磁スペクトラムの「短波」領域での問題の原因となる周波数の ブロックアウトのために用いることのできる「ノッチ・アウト」機能を持つ。
反論3: データ通信を可能とするため、 スペクトラムのある程度の部分はブロックされないままとしなければならないので、 それらはスペクトラムの一部のエミッションをブロックできるだけである。 ブロックされていない部分のスペクトラムのエミッションは、 依然として EMC 指令の必須要求に反する。
また、最近の分析は、現実においては、 主電源に接続されていることが確実な整流器での相互変調のため、 「ノッチング」 (例えばデジタル・ラジオ・モンディエールの保護のための) は有効性を限定的にしか、あるいは全く持たないであろうことを示した。
主張5: 75,000台程度の製品を販売してきたが、 UK の執行機関職員は 81件の苦情を受けただけで、 そのうち3つが解決されていないだけである。
反論5: 苦情の件数 (解決されたかどうかにかかわらず) が、 任意の製品が許容できない干渉を生じる可能性の実際の理解を 何ら与えられない、いくつかの優れた理由がある。 EMC Journal の第83号の他の箇所の Richard Marshalls の記事を参照されたい。 苦情を81件「しか」受け取っていない同等の販売量の他のどのような製品が、 満足であると見做されるであろうか？
そうすることで、彼らはコストを要する大きなコンポーネントを 製品の主電源フィルタから取り除ける。 大量生産の製造業者は年に数億円を節約し得る ―― いつでも説得力のある主張であるが、今日の困難な経済状況では特にそうである。
勿論、そのような製品を市場に出すことは 主電源網上のノイズ・レベルを速やかに現在そうあるよりも遥かに高くし、 PLT 製品がもはや良く働かないようにするであろう。
より重要なことだが、 これは多くの専門的な使用者 (UK 沿岸警備、国防、そして国家安全保障を含む) が依存している HF スペクトラムに PLT が 与えているダメージに加わり、 顕著な安全上の含意を持つことになるであろう。
PLT 製品に伴う干渉の苦情のレベルが低かったため、DG Enterprise は、 最近、これはそれらが実際に EMC 指令の必須要求に適合していることを示すと 主張し始めた (だが上の反論5を参照)。
そのような声明は論理的に、また技術的に誤っているが [2]、 それらは EMC 指令への総合的責任を持つ人々によって作られているため、 製造業者はそのような主張を EMC 技術文書にコピーし、 それらを同様の極度に高レベルの伝導性主電源エミッションを持つ 非 PLT 製品の正当化のために使用できることだろう。
その結果は、HF 周波数帯の価値が永遠に、 そして良い理由なしに損なわれるであろうことである ―― PLT 製品はもはや信頼できなくなり、 従ってそれを使う人は極めて少数となるであろう。
[2] Keith Armstrong, "Absence of proof is not proof of absence", EMC Journal, Issue 78, September 2008, www.theemcjournal.com
これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。
Last update: 2009-09-07