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バナナの皮 ― IX

49. EMC 性能の正しい規定の失敗： 重要な顧客と交渉しているある大きな工業用ファスナー製造業者が、 プラスチックの梱包をファスナーで充填する自動計量器を含んだ梱包装置と、 その梱包を封止する RF 溶着機との設置に合意した。 費用的な理由から、それらの２つの機械は別々に購入された。 電磁環境のアセスメントは行なわれず、 その機械の納入仕様は「全ての法的な要求を満たさねばならない」 というもの以外の EMC 要求を含んでいなかった。

    双方の機械の納入、設置、そして試験は順調に完了した。 残念ながら、それらの双方が同時に動作したとき、 その計量器は溶着機で用いられている RF の干渉 (珍しい問題ではない) によって 25% を超える誤差を生じた。 その装置は８時間のシフト中に £20,000 分のファスナーを梱包する筈であったが、 誤った計量のために £4,000 分の製品を失う可能性があった。

    その製品が仕様を満たしていた機械納入者に対する不平はなかった。 双方の納入者は助けようとしたようであるが、 急がされると互いに責任を押しつけあった。 専門の技術アシスタントが呼ばれ、その問題を解決した。 そのファスナー製造業者は６週間の製造を失い、 追加費用を被り、そして彼らの重要な顧客の信用を失った。

50. EMC の過剰仕様： ある AC インバータの製造業者が 強力な競合相手に対抗して大きなプロジェクトの契約を勝ち取ったが、 その仕様が軍事 EMC 規格への適合を要求していることに気付かなかった。 彼らの標準的な設計のインバータはその EMC 試験に不合格となり、 その顧客はそれらを拒否した。 軍事 EMC の経験がないために、再設計されたインバータが 機能的仕様に適合しないであろうことを見付けるだけのために時間と労力が浪費された。 そのインバータ製造業者は事業から撤退し、 また彼らの顧客の製造は遅延して収益と市場での信用の双方の喪失を引き起こした。 その顧客は、軍事 EMC 規格が 彼が本当に必要としているものとかけ離れていることに気付いた時に、 彼らの製品の電磁環境を正しくアセスすべきであった。

51. 不適切なコスト削減活動： ある製造業者が世界中で販売される高品質の工業用機器を製造していた。 新しい経営陣は、その収支状況の悪さは 彼らの製品を作るためにコストを要し過ぎているためであると考え、 設計の変更を行なうために生産技術者を雇うことを含むコスト削減活動を始めた。 その設計者達は、製品に彼らの名高い信頼性を与えるために 歴史的に作られた設計ルールを用いていた。 それらは長年にわたってフィールドでの干渉問題に対処することで 作り上げられてきた EMC 保護手段を含んでいた。 設計部門は EMC を実際に理解しておらず、 その変更によってどの保護が失われたかに気付かず、 そして費用効果の良い代替手段を提案することができなかった。

    新しい設計によって多数の機械が組み上げられ、 新しい価格体系によって UK で、そして特に USA で良く販売された。 残念ながら、その製品は現実に出会う電磁環境に対するイミュニティの低さのために 信頼できないものであった。 その結果は、製品の評判の喪失とともに、ある顧客による製品の拒否、 そして立ち上げ担当技術者の１年以上にわたる USA への駐在を含むものとなった。

    コスト削減テクニックの実施による企業の収益性の低下は珍しいことではない。 その代わりに、変更の全ての結果を考慮に入れ、 費用効果改善テクニックを用いるべきである。 この事例では、その製品の歴史がEMC の知識が必要であることを明らかにした筈である。

52. ケーブル敷設における誤り： ある大手自動車用部品製造業者が、 総費用が２億ポンドを超えるプロジェクトで一連のロボット制御塗装ブースを発注し、 その EMC 性能を正しく規定した。 受注した納入者はそれらの EMC 要求を満たすことに合意し、 不履行の際の金銭的なペナルティを受け入れた。 コストを節約するために、その納入者は彼らの塗装ブースを設置するが、 そのケーブルは地方の請負業者に設置させるように ユーザーが手配することが合意された。 設置された時、その塗装ブースは一見すると脈絡のない (そして時には危険な) 故障を生じ、ユーザーはそれを受け入れなかった。 そのユーザーと納入者の双方のスタッフによる調査ではその問題を同定できなかった。 そのユーザーは製造期限に間に合わせるために塗装工を余分に雇わなければならず、 その納入者は履行の遅延に対する金銭的ペナルティの支払いを始めた。

    外部のコンサルタントは 全ての相互接続ケーブルの遮蔽が局所接地 (その機器の接地ではなく) に デージー・チェーンで終端されており、 制御回路への干渉を許していたことをすぐに同定した。 その納入者は通常は製品の設置のために専属の訓練された設置要員を使っており、 遮蔽ケーブルの正しい終端に関する指示文書を持っていなかった。 残念ながら簡単な答えはなく、 ケーブルの 80% を (正しい遮蔽終端を用いて) 交換せざるを得なかった。 納入者はその請求書を受け取った。

    顧客のコスト	製造業者のコスト
    生産の喪失	契約上の金銭的ペナルティ
    余分な塗装要員の費用	調査 (スタッフ) のための追加費用
    調査のための追加費用 (内部、及び外部のスタッフ)	再配線のための追加費用
    	顧客の信用の喪失

    誰に罪があるのかの法的な議論がしばらく続いたが、 その塗装ブース納入者からのケーブル設置指示の欠落が決定的要因となった。 この契約ではそうしないということに合意していたので、 通常は彼らの要員が彼らの機器を設置しているという主張は割り引かれた。

これらの記事は、IEE のイベント、 「Electromagnetic compatibility in heavy power installations」, Teesside, 23rd February 1999 に提出された。 工業用の製品や施設 (大電力のもののみではなく) に関係する 全ての人にとって価値のある論文を含んでいるその要項 (ref: 99/066) のコピーは、 IEE Sales (phone 01438 313 311, fax 01438 313 465, or e-mail: sales@iee.org.uk) から各 £20 で購入できる。

これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2001-05-01

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