バナナの皮 ― IV

最近、非常に強力な ±8,000アンペア直流駆動装置が購入され、ある工業プラントに設置された。契約上、それが EMC 指令を満足し、また適合宣言を行なう旨が合意されていた。制御室 (現代的な制御室の大半と同様、PC と CRT ディスプレイが並べられている) も必要であり、その駆動装置の製造業者はそれをその駆動装置のキャビネットの近くに設置することができると言った。その駆動装置が動作した時、その CRT ディスプレイ上のイメージは画面の幅の 50% 以下にまで押し潰された。その駆動の向きや負荷をディスプレイのイメージの動きから直接言い当てることもでき、当然これは完全に読めないものとなっていた。駆動装置によって発生した磁界は 235μT のオーダーであり、大半の CRT ディスプレイは 1μT (1μT はおおよそ 0.8A/m、また 10ミリガウスと等しい) 以上でイメージの移動を示す。
それが制御室のディスプレイへの干渉を引き起こしているという事実にも関わらず、駆動装置の製造業者はその駆動装置は EMC 指令を満たしていると主張した。実際に彼らが意味していたのは、それが低周波磁界エミッションの限度を含んでいない工業環境一般規格を満たしたということであった。彼らは、EMC 適合宣言書が彼らをいかなる種類の干渉も引き起こさないように拘束すること、またある整合規格への準拠は適合性の推定を与えるに過ぎないことを見落としていた。
この状況は、使用されていた SCADA システムの仕様に適したものが最近入手できるようになったばかりの LCD ディスプレイの使用によって対処された。「犬小屋」磁気シールドや、アクティブ磁界キャンセル・デバイスも検討された。その制御室が使えるようになるまでの遅れは数ヵ月に及び、これは対策手段のコストを遥かに超える影響を生産性に及ぼした。
我々は、夜中にバスルームを使うために起きた時に次のようになる状況の中で過ごすことを学んだ。電灯を点けるとファン・タイマーが起動する。そのファンは 20分動き続け、それが止まる時に屋外の防犯灯 (赤外線に反応する 500W のハロゲン球) を点灯させる干渉を引き起こし、それは所定の時間 (15分) 点灯し続けて寝室の窓を通して輝く。
さて、この先を信じるのは少し難しいかも知れない。 Monty Python があなたのハートを食い破る …
500W ハロゲン・ランプに替える前には、誘導安定器を持つ高圧ナトリウム・ランプを使っていた。これが消灯する時、それは時々枕元のラジオに干渉してそれを起動させた。
そう、このシナリオは：午前２時に起きてバスルームへ行き、灯りを点け、それを消し、ベッドに戻ると、 20分後に窓を通して明るい光が輝いてあなたを起こす。それでも眠っていられた (あるいは眠り直した) ならば、 15分後に灯りのスイッチが切れた時にラジオが入り、あなたは再び目を覚ます。
この話の教訓は？もし EMC イミュニティが良くないものを持っているならば、眠る前にバスルームへ行くこと。
(From Chris Dupres via emc-pstc@ieee.org, 8/7/98)
1980年台の始めに講座を取っていた頃、私の教授はニュージャージーにおける酷い事故に関係した。ある病院の産婦人科の集中看護部において、乳児の死亡が多数発生した。夜遅く、乳児モニタの警報が明らかな理由なしに切れることがあった。これに困り、看護婦達はそれらを切って巡回を行なうようにした。
教授は、いくつかの予備的な調査の後、近くの TV 送信器が真夜中から朝６時まで送信電力を相当上げることなどをその FCC ライセンスによって許されていることに気付いた。ナース・ステーションと様々な乳児モニタを繋いでいるケーブルはその周波数で共鳴し、誘発された電圧が警報を解除した。私がこれにどのように関わったかやその病院の名前以外の細かい点はもう確かではないが、彼らはそれを解決するまでに６人程度の子供を失った。
(From Doug Mckean, via emc-pstc@ieee.org, 29/7/98)
AC 電源の電圧低下 (brown-out) は、発展途上国において、また AC 電源網の構成が不適切な場所においてはありふれている。スペインの一部において、公式に規定された主電源は AC 230V±6% であるにも関わらず、部分的には電源網の負荷によってある日の相当の期間 AC 150V 前後となったことが知られている。 UK においては、私は雷雨に際して完全に停電する前の一秒程度のものを除いて電圧低下を経験したことはなく、その電源網が運用されている方法のためにそれはあり得ないと考えていた。
1998年7月26日の日曜日の午後５時頃、Denshaw 村において電源が AC 140V 程度 (平常時より 40% 下) に低下し、技術者がその問題を解決するために来て完全に停止させるまで３時間程度その水準が続いた。主にそれらが非常に奇妙な騒音を出したことから、我々は冷蔵庫やその他のモータが付いた装置の電源を切った。コンピュータは動き続けたが、CRT 画面は真っ暗になり、データに何が起きるのか心配になったので、我々はそれら全てのスイッチも切った。
規定された AC 電源範囲のかなり外で動作させた時に誤動作を生じ得る電子制御機器を知っており、また電圧不足はコイルやモータに損傷を与え得るものと理解している。明らかに、モータは電圧低下によって停止し、逆起電力を生じなくなり、そして過大電流が流れて過熱し、(感電や火災を引き起こさないとしても) その絶縁を損傷して故障に至る可能性がある。
発展途上国向けの製品の製造業者、そしてその安全試験ラボは、普通は ±10% (時には ±15%) よりも外の電源電圧での試験を行なわない。 7月26日の日曜日までは、私はこれを重要とは思っていなかった。これまでのところは、我々は装置やデータの損傷を見付けてはいない。
(From Keith Armstrong, Cherry Clough Consultants)

これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を T. Sato が翻訳したものです。この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2000-10-28

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