バナナの皮 ― III

Sunday Times (1998年2月15日) と New Scientist (1998年3月7日) で、飛行中のトレーの転倒を防止するために Sabena Belgian World Airlines が A340 エアバスの新しい機体に磁気トレイ・テーブルを取り付けたが、そのトレー・テーブルが PC のハード・ディスク・ドライブのデータの喪失を引き起こし勝ちであると報告された。 3月28日の New Scientist はこの話が誤りであったことを報告したが、この種のテーブルはフランクフルトからベルリンへの列車で知られている。この結論は、何らかの乗物の中で PC を使おうと思うのであれば、常にペーパー・クリップ (スチールの！) を持ち歩き、テーブルが磁化されているかどうかを調べるためにそれを用いるべきであるというものであるように思われる。
IEE の Control and Computing Journal の 1998年4月の記事 (52ページ) からの引用：「高出力放射フィールド (HIRF) 銃、及び電磁パルス変圧器 (EMPT) 爆弾は、市場で購入できるコンポーネントから今でも容易に組み立てられる。手製の HIRF、あるいは EMPT 兵器の効果でさえも、数百メーターの範囲のマイクロプロセッサに損傷を与えられる。数年以内に、適当な電子機器を積んだバンがウォールストリート (あるいは Carry Wharf ――編集者) を走りながら、地方警察に見付かることなく数千台のコンピュータの情報処理能力を妨害する可能性がある。」
無線式のキーの締め出し問題 (Banana Skins No. 9) の追加： Electronic Times (1997年9月29日) の記事は、「大半の無線式キー・エントリー・システムは手動オーバーライドを持っている。そのドアのロックの解除は、その車の説明書に書かれた指示に従って機械的なキーを錠に差し込んで施錠する程度の容易なものである」と言っている。このアドバイスの問題は、その説明書は普通は車の中に閉じ込められている (それとも、我々はそれを常に持ち歩くことが期待されているのか？) ことである。
医療事故に関する追加：水道管系を流れる接地電流によって引き起こされる磁界が、ある病院の一部にある敏感な電子計測器を使用できなくした。患者に接続された輸液ポンプが静電気放電による損傷を受けたが、幸いなことに警報システムは影響を受けず、看護婦に警報が出された。プラスチック溶着機を用いた手術が患者監視／管理システムへの干渉を引き起こし、患者の腕の血流の停止の検知を失敗させ、後に切断を行なわざるを得なくなった。
(Taken from Compliance Engineering European Edition March/April 1998)
ある日曜 (1994年7月24日) の午後 1時23分、 Milford Haven の Texaco 精錬所で爆発があった。その力は４トンの高性能爆薬に相当し、鎮火するまでに２日を要した火災を引き起こした。 Milford Haven から 3km 離れた店の窓が吹き飛ばされた。 26人が軽度の傷害を受けたが、それが日曜の昼飯時であり、またその施設が部分的にのみ使われていたという事実は、それが遥かに悪いものとなり得たことを意味している。そのプラントへの損傷は重大なものでり、建て直しの費用は 48億ポンドと予測された。そのプラントからの生産の喪失もあった ―― これは UK の精錬能力に著しく影響するのに充分なものであった。この事故は、その施設全体にわたる様々な電気的な、そしてその他の妨害を引き起こした、日曜の朝 7時49分から 8時30分までの雷雨が引金となった。
(IEE Computing and Control Engineering Journal April 1998 pp 57 - 60).
この事故に関する HSE 報告書がある： "The explosions and fires at Texaco Refinery, Milford Haven, 24th July 1994", HSE Books, May 1997.
コメント： 著者は HSE 報告書を読んでいないが、HSE の専門家との個人的な話から、他のものを動作させたままでいくつものポンプ・モータを停止させた電源サージを起こした雷雨によって大爆発が引き起こされたものと理解している。その雷雨から後のいくつもの小さい火災と機器の停止によって引き起こされた情報の過負荷によるかなりのパニックと混乱があり、焼き尽くされるべき可燃物が配管や容器に堆積していることは気付かれなかった。５時間後、何かがその堆積物を発火させ、大爆発という結果となった。 UK の AC 配電網における一般的なサージの発生率は非常に低く、これはしばしば人々に彼らの製品、システム、あるいは施設に電源サージ・イミュニティを持たせることは重要ではないと確信させる。しばしば、この確信は一般的なイミュニティ EMC 規格のいずれもその Normative セクションにサージ試験を含んでいないという観察によって支持される。しかし、上述のような非常に大きなプラントのライフタイムにおける単一の事故でさえも、適切な予防戦略のための優れた経済上の事例となる。適切な基本試験規格は IEC 61000-4-5 や IEC 61000-4-12 (ring wave) を含み、これらはいずれも電源網への雷雨の間接的な影響のシミュレートを意図している。
技術者は常にコストを節約するプレッシャーのもとにあり、予防手段のコストは削られやすい。しかし、多くの技術者は雷雨のように稀で予測できない事象のリスクの予想が得意ではなく、彼らのマネージャに実際のリスク／コストと安全性の関係について効果的に伝えていない。最近誰かが言ったように：医者は人を一人づつ殺すが、技術者は百人づつ殺す。ここではキャリアと個人的な信用も賭けることになるので、明確なコスト／リスク分析を作成し、マネージャから文書による判断を得ることが常に最良である。

これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を T. Sato が翻訳したものです。この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2000-10-22

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