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製品安全適合性の確認のための試験 ―― 機械的試験

by Gregg Kervill (GK Consultants Ltd.)
翻訳: T. Sato

概要

この論文では、基本的な製品安全性試験に関連する問題や技法に取り組むことを始めるべきであろう。これは詳細な、専門的な、また百科辞典的な知識を必要とする地雷原というだけではない ―― これは、我々が作り上げた製品が整合規格の広範囲で詳細な安全性要求に適合することを保証するための「最後の堀」である。

従って、我々が何をしなければならないか、そして我々がどのように着手しなければならないかを反映することが不可欠である ―― おそらく、これは設計プロセスの中で最も大変な作業である。

黄金律

私はいつも尋ねられる ―― 「あなたはこれを何年もやってきた ―― いくつかの単純な秘訣や手法がある筈だ」

90年代の初めに、私は製品安全性分析を支援するための「エキスパート・システム」を作ろうとした。単純な構造を作ろうとして何週間も費し、数ヵ月後には機能するどんな構造を見つけることでも望んでいた ―― 結局、何年か後に、私はあきらめた。

以下の章を通して、私は設計や製品安全性の証明 (適合性確認) を容易にし、また物理的レビューの実施を助けるためのいくつかの単純な技法を示す。しかし、理解、知識、そして経験を置き換えるような近道や万能薬はない。

しかし、何年ものあいだに (主につらい経験の結果として)、私は少数の「黄金律」を学んだ。ここに、それらの一部を示す：

レビューや試験を行なう際に、我々は製品を不合格としようとする！我々はそれが合格することを示そうとしているのではない。以下の「正しい意識」の章を見よ。
関係する規格のコピーを常に手元に置き、その本をあなたの理解を助けるために使え。
あなたの理解、資格、そして能力に確信がない限り、決して製品をレビューし、あるいは製品安全性レビュー・チェックリストを使わないこと。 (過ちを犯した場合には、かなりの個人的なリスク ――物理的な、あるいは財政的な―― を持つことになる可能性がある。)
疑義がある場合には、常に危険側に間違えよ ―― 規格が改定される際には、その変更は通常はそれらをより明確にし、あるいはその条件をより厳しくするようなものとなる。
製品の一部が「きわどい」ものの、規格の解釈がその設計を受け入れることを許すことに気付いたならば、そのきわどい合格がきわどい不合格となった時の影響を考慮せよ (そして管理者に説明せよ)。
重要なパラメータは最小値、あるいは最大値として規定されていることを忘れないこと。もしこれらを代表的な設計パラメータとして用いたならば、全製品の 50% が不適合となり、潜在的に違法となることを、自動的に保証することになる。
疑わしい製品を顧客に供給することを許すように強制されないこと ―― サンプルや再生品は安全性についての最新の規格に適合しなければならない。
常に不適合を正すこと。製品に CE マークを付けるのであれば、不適合は刑法犯罪であることを知っておくこと。あなたは起訴され、罰金を課され、そして服役させられるかも知れない。
常に体系的に作業を行ない、それぞれのステップを記録すること。これは第三者があなたの道筋を追いかけることを可能とする ―― これは、誰かがその製品に関する詳細な質問に答え、あるいはクリティカルなコンポーネントを再定義する必要がある場合には不可欠である。
コンポーネントの使用に同意する前に、常にそれぞれの安全クリティカル要素の安全性証明書のコピーを入手すること。
決して仮定しないこと。
常に証明を要求すること。
決して口頭での保証を受け入れないこと。

正しい意識

設計技術者として、我々は我々の製品が正しいものであり、正しく動作することを期待する ―― もしそれに 95% 未満のチャンスしかないと考えていたならば、我々は設計プロセスを開始しなかったであろう。この「正しい」性能への期待は、我々が乗り越えなければならない最大の問題である。我々はそれを不合格とするように試み、それがどのように危険を生ずるかを分析しなければならない；その後に、この知識に基づいて、我々は修正、及び／もしくは (許容できる場合には) 警告を加える。

これを始める前に、我々があり得ない、不合理である、あるいは明らかに馬鹿げていると考えた何かを、誰かが、どこかでやるであろうことを憶えておくこと ―― そして、もし彼らが傷害を受けたならば、我々は少なくとも我々の製品を弁護しなければならなくなるであろう。逆の極端な場合においては、我々は欧州経済領域全体で全ての製品をリコールすることを強制されるかも知れない。

機械的試験

これらの試験は、普通は「オペレータ」が傷付けられないことを確認するように設計されている。この試験は普通は２つの可能性を考慮する：

製品が「オペレータ」に傷害を与える
―― 安定性 (転倒) 試験
「オペレータ」がその製品によって自分自身で傷害を与える
―― 接近可能性、するどいエッジ、機械的強度

注意：以下の試験は権威のあるものではなく、必要となる ――だが、しばしば設計確認段階で見落とされる―― 機械的試験のいくつかの概要を示すことを意図したものである。あなたの製品に適切な安全規格に詳細に示されている要求を参照して欲しい。

機械的試験
注意：これらの試験に際して、足、車輪、その他の調整可能な部品は、最悪の条件に設定する。
試験目的手法
傾斜試験被試験機器 (UUT) が輸送や手での取り扱いに際して転倒しないであろうことを確認する UUT を全ての方向 (後方、前方、左、及び右) で垂直から10°傾斜させる。傾斜させた力が取り除かれた時、UUT は垂直に戻らなければならない。
オペレータのプッシュ UUT が通常の使用に際して寄りかかられた時に転倒しないであろうことを確認する。規格で規定された最大の高さまでの範囲で、全ての面に、全ての方向 (上向きを除く) の、所定の試験力を加える。 UUT が床の上で滑ることを防止せよ。もし UUT が傾き出したならば、力をその状態で維持せよ ―― UUT は転倒してはならない。「オペレータ」がアクセスすることのできる扉、付属品、引出し、あるいはトレーを開け、全ての条件のもとで試験を繰り返す。
サービスにおけるプッシュ UUT がサービスに際して転倒しないであろうことを確認する。「サービス」要員がアクセスすることのできる扉、付属品、引出し、あるいはトレーを開ける。「サービス指示書」に従って安定化機構をインストールし、規格で規定された最大の高さまでの範囲で、全ての面に、全ての方向 (上向きを除く) の、所定の試験力を加える。 UUT が床の上で滑ることを防止せよ。もし UUT が傾き出したならば、力をその状態で維持せよ ―― UUT は転倒してはならない。
ステップ試験予見可能な誤使用のもとで UUT が壊れ、あるいは危険を生じないであろうことを確認する。規格で規定された最大の高さまでの範囲で、全ての面に、下向きに 800N の力を加える。 UUT は、転倒し、あるいはその他のいかなる機械的な危険も生じてはならない。 UUT 内の沿面距離、及び空間距離は損なわれてはならない。
内部構造への力の試験通常のサービスが危険を引き起こさないことを確認する。規定された力 (通常は 30N) を内部の面に全ての方向で加える。クリープ距離、及び空間距離は損なわれてはならない。安全デバイス (インターロックや過負荷保護デバイスのような) の動作は損なわれてはならない。
アクセス性「オペレータ」がいかなる危険にも接触できないことを確認する。テスト・フィンガーやテスト・ピンを全ての開口部 (「固定型」機器の下の開口部については、通常は特別な要求がある) に対して用いる。この試験器具はいかなる危険な部分にも触れてはならない。これは、通常は触れることのできる部分を全て記録し、それらが安全要求に適合することを保証するための追加の試験 ――この後の論文を見よ―― を行なうことを意味する。「オペレータ」がアクセスすることのできる全ての扉、付属品、引出し、及びトレーを開け、全ての条件のもとで試験を繰り返す。何らかの工具が「オペレータ」が接近できるようにしたならば、いずれかの付属品を戻し(必要であれば工具を誤って使用する)、試験を繰り返す。
衝撃試験 UUT が所定の強度を持つことを確認する。機械的、防火、あるいは電気的エンクロージャを提供する全ての面に、500g の鋼球を落下させる (あるいは、規定されていればインパクト・ハンマーを使う)。面にテスト・フィンガーが挿入できるだけの亀裂を生じてはならない。また、クリープ距離、及び空間距離が損なわれてはならない。
するどいエッジ外部や内部の面が、「オペレータ」、「サービス要員」、あるいは電気的絶縁に危険を与えないであろうことを確認する。整合規格の大半はこのための試験機器を規定していない ―― 通常は物理的な検討が受け入れられる。これをあなたの指でチェックすることは良いアイデアである。

機械的試験
注意：これらの試験に際して、足、車輪、その他の調整可能な部品は、最悪の条件に設定する。
試験	目的	手法
傾斜試験	被試験機器 (UUT) が輸送や手での取り扱いに際して転倒しないであろうことを確認する	UUT を全ての方向 (後方、前方、左、及び右) で垂直から10°傾斜させる。傾斜させた力が取り除かれた時、UUT は垂直に戻らなければならない。
オペレータのプッシュ	UUT が通常の使用に際して寄りかかられた時に転倒しないであろうことを確認する。	規格で規定された最大の高さまでの範囲で、全ての面に、全ての方向 (上向きを除く) の、所定の試験力を加える。 UUT が床の上で滑ることを防止せよ。もし UUT が傾き出したならば、力をその状態で維持せよ ―― UUT は転倒してはならない。「オペレータ」がアクセスすることのできる扉、付属品、引出し、あるいはトレーを開け、全ての条件のもとで試験を繰り返す。
サービスにおけるプッシュ	UUT がサービスに際して転倒しないであろうことを確認する。	「サービス」要員がアクセスすることのできる扉、付属品、引出し、あるいはトレーを開ける。「サービス指示書」に従って安定化機構をインストールし、規格で規定された最大の高さまでの範囲で、全ての面に、全ての方向 (上向きを除く) の、所定の試験力を加える。 UUT が床の上で滑ることを防止せよ。もし UUT が傾き出したならば、力をその状態で維持せよ ―― UUT は転倒してはならない。
ステップ試験	予見可能な誤使用のもとで UUT が壊れ、あるいは危険を生じないであろうことを確認する。	規格で規定された最大の高さまでの範囲で、全ての面に、下向きに 800N の力を加える。 UUT は、転倒し、あるいはその他のいかなる機械的な危険も生じてはならない。 UUT 内の沿面距離、及び空間距離は損なわれてはならない。
内部構造への力の試験	通常のサービスが危険を引き起こさないことを確認する。	規定された力 (通常は 30N) を内部の面に全ての方向で加える。クリープ距離、及び空間距離は損なわれてはならない。安全デバイス (インターロックや過負荷保護デバイスのような) の動作は損なわれてはならない。
アクセス性	「オペレータ」がいかなる危険にも接触できないことを確認する。	テスト・フィンガーやテスト・ピンを全ての開口部 (「固定型」機器の下の開口部については、通常は特別な要求がある) に対して用いる。この試験器具はいかなる危険な部分にも触れてはならない。これは、通常は触れることのできる部分を全て記録し、それらが安全要求に適合することを保証するための追加の試験 ――この後の論文を見よ―― を行なうことを意味する。「オペレータ」がアクセスすることのできる全ての扉、付属品、引出し、及びトレーを開け、全ての条件のもとで試験を繰り返す。何らかの工具が「オペレータ」が接近できるようにしたならば、いずれかの付属品を戻し(必要であれば工具を誤って使用する)、試験を繰り返す。
衝撃試験	UUT が所定の強度を持つことを確認する。	機械的、防火、あるいは電気的エンクロージャを提供する全ての面に、500g の鋼球を落下させる (あるいは、規定されていればインパクト・ハンマーを使う)。面にテスト・フィンガーが挿入できるだけの亀裂を生じてはならない。また、クリープ距離、及び空間距離が損なわれてはならない。
するどいエッジ	外部や内部の面が、「オペレータ」、「サービス要員」、あるいは電気的絶縁に危険を与えないであろうことを確認する。	整合規格の大半はこのための試験機器を規定していない ―― 通常は物理的な検討が受け入れられる。これをあなたの指でチェックすることは良いアイデアである。

次の論文

次の論文では、製品を市場に出す前に必要となる電気的試験のいくつかについて述べる。

これは、Gregg Kervill 氏が UK EMC Journal 上で発表した文書を、その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: November 7, 1999