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PC 組み立て業者と EMC 適合性

Dr. P. D. Slade, Exeter University and Mr J. Wilson, EMC Network (SW) Ltd

翻訳: T.Sato

1. はじめに

PC 組み立て業者には、 EMC 適合性の達成のための２つの標準的なアプローチがある：
  1. 自己確認： これは適切な整合規格、例えば EN55022 に対する試験を意味し、 最も単純なケースではこれは「最悪条件」の詳細な試験を含むであろう。

  2. 技術構成ファイル (TCF)： Competent Body を通るこのルートも、 しばしば「最悪条件」のシナリオに集中するであろう。

小さい企業が組み立てる典型的な PC の構成部品は、 コストと入手性に基づいて選択される。 典型的な PC で用いられる構成部品の多様性のために、 その最悪条件は決定できないか、さもなくばすぐに変わるものとなることから、 これは適合性への双方のアプローチで問題を生ずる。 試験は持続的な要求となり、これは単にコストの点から、 その状況を大企業以外の全てにとって非現実的なものとする。 幸い、EMC 指令 [2] に関するガイドラインの改訂版 [1] は、 解決を与える方向に進んでいる。

この EMC 指令に関する改訂版ガイドラインは、 CE マークの付けられたコンポーネントの排他的な使用に基づいたシステムの適合性の仮定 ―― CE + CE = CE ―― を許している。 (ここで言っている「適合性」は EMC 指令のみに関するものである。) この意図は、適合へのルートを単純化し、 これによって製造業者のコストを低減することであった。 このガイドラインは、このアプローチに潜在的な問題があることを認識している。 我々が適合性試験を行なっていた多数の製造業者の製品からの 伝導性、及び放射性のエミッションの測定結果は、 CE マークの付けられたコンポーネントの排他的な使用は 適合性を保証しないことを明白に示した。 これにはいくつもの理由がある：

  1. それぞれのコンポーネントが 放射性、及び伝導性のエミッション電力の総量に寄与し、 従って適合するシステムに どれだけ多くのコンポーネントを組み込めるかの限度がある筈である。 個々の寄与はコンポーネントの製造業者によって良く定義されていない。

  2. システムはエンクロージャの遮蔽効率や電源モジュールのフィルタ機能に依存する。 これらは定義されていない。

  3. マザー・ボードやプラグ・イン・カードの動作周波数の急激な上昇は、 古いコンポーネントを試験した時よりも高いノイズ・レベルを発生させる。 ボードの組み合わせには制約はない。

  4. 一般的な、EMC の知識の欠落と、適切な設置インストラクションの欠落。

上の問題はこのアプローチを無効とはしないが、 単なる CE マークや適合宣言書よりも詳細な知識が必要であることを示す。 もしそのコンポーネントの追加の影響を知るために充分な情報が与えられるならば、 その適合性の仮定は正当化される。

2. 共同体制

Exeter 大学は EMC テスト・ハウス、 EMC Network (SW) の共同所有者である。 この大学は、その地域の企業のために、 低コストの予備適合性試験とともに完全な適合性試験を提供している。 Southwest の中小企業の便宜のため、我々は EMC 訓練コースも実施している。 これらの資源は、この問題に取り組むための理想的な基盤を与える。 CE + CE = CE を可能とするための手法の構築は、発生する実際的な問題と、 関係者の限定された専門知識による対処を含まなければならない。

ここで採用したアプローチは我々のテスト・ハウスにおける顧客との経験に基づくが、 そのアイデアがユニークなものではないことは素直に認めよう [3]。 採用されたアプローチは、 そのテスト・ハウス自身の設立と似たラインに従うものである。 いくつかの企業の小さな代表グループが、Exeter 大学と連係して、 North Devon を基盤とするネットワーク・ブローカーの Don Adams の中立の議事進行のもとに、 数ヵ月にわたって会合を持った。 この会合の目的は、関係者に以下の成果を提供する 企業間の公式な共同ネットワークを設立することであった：

3. 技術的問題

基本的な要求は、 PC の EMC 環境に対するそれらの寄与の単純な加算を可能とするための、 コンポーネントの特性を示す充分に詳細なデータベースを作成することである。

3.1 EMC モデルの作成

個々のコンポーネントがシステム全体に為す寄与を評価するために、 システムの単純なモデルを作る必要がある。 EMC 指令は、最終的なシステムを、 主電源ケーブルを介した伝導性エミッションと システム全体からの放射性エミッションの発生源と見倣す。 このモデルの外殻はその２つの発生源のための出口を示す２つのポートを含む。 伝導性エミッションのポートは容易に同定され、 これは基本的には電源入力インターフェースであるが、 放射性エミッションのポートはより厄介なものとなる。 その主電源ケーブル、キーボード・ケーブル、 エンクロージャのスロット、そしてプラグ・イン・カード用ポートの全ては、 いずれも放射性エミッションのポートの一部を構成する。

それぞれのポートに関連して、存在しているフィルタや、 エンクロージャやケーブルなどの遮蔽効率による減衰があるであろう。

このモデルは、エミッションの発生源とその性質も扱わなければならない。

3.2 コンポーネントの分析

システムのそれぞれのコンポーネントは、 そのエミッションの発生への寄与や減衰の決定のための分析を必要とする。 それぞれの場合で加算のされ方が異なるので、エミッションの発生への寄与は 相関のあるものと相関のないものとに分けなければならない。

互いに無関係なノイズの電圧や電流は無相関であると呼ばれ、 その総ノイズ電力は個々の電力の合計となる：

Vtotal = √(V12 + V22)

２つの相関のあるノイズ電圧は、次の式で加算できる：

Vtotal = √(V12 + V22 + 2γV1V2)
ここで、γ は -1 から +1 のあいだのどの値も取り得る。 我々は、その最悪条件を仮定し、γ = 1 とできる。 伝導性と放射性のエミッションは、別々に扱う必要がある。

3.3 コンポーネントの特性

コンポーネントの製造業者がこの情報を提供しているのを見たものの、 その現状は全く不適切なものであり、それらのコンポーネントの特性を測定して 適切なデーターベースを作成することが必要となるだろう。 我々の設備はこの任務の遂行のために適切以上のものであるが、 重要な問題は、引き続いての計算のために適切なものとしながら、 そのプロセスを費用効果の良いものとすることである。 9kHz (伝導性エミッション測定)、 及び 120kHz (放射性エミッション測定) の分解帯域幅は、 それぞれ 3317個、及び 8083個のデータ点をもたらす。 この値は、規格 [4] で規定されている平均値と準尖頭値の測定を考慮すれば２倍になる。 明らかに、この手法を容易に使用できるものとするためには これは許容できないであろう。 幸い、エミッションのスペクトラムは、 いくつかの局所化された広帯域のエミッションとともに、 既知のクロック周波数群とそれらの高調波に支配される。 考慮する必要があるのは、スペクトラムへの主要な寄与のみである。 この手法の評価で重要な部分は、最終的なシステムの組み立てと試験である。

コンポーネント製造業者から供給される情報は、 しばしば不適切な出処不明のものであるので、 このデータの集積は関係者にとっての直接的な利益となる。

3.4 最終的なシステムの試験と評価

最初の目標は、そのアプローチが満足に働くことを検証することである。 そこで、我々は、 特性のはっきりしているコンポーネントのみから構成されたシステムに対して、 所定の規格で規定されている測定を行なうであろう。 その後で、計算と測定との詳細な比較を行なえる。 モデルとデータの単純化の程度を決定できる。 その後に、我々はこの基礎のもとに現実世界の状況に (すなわち、関係する企業のグループに対して) そのアプローチを適用し、最終的に組み上げられたシステムの機能の適切さを サンプリング・ベースで再検証できる。 我々が、そのエミッション・レベルの正確さを求めようとしているのではなく、 その機器が規格で要求されているレベルよりも充分に下にあることを 保証しようとしていることに気付くことが重要である。 問題のあるコンポーネントは拒否され得る。

3.5 イミュニティの問題

放射性、及び伝導性のエミッションは、コンポーネントの特性を求め、 それらの個々の寄与を加算することで扱える。 感受性は単純な方法では加算されない。 現在、一般イミュニティ規格 EN 50082-1 から決定されたイミュニティ試験要求は 非常に控え目なものであり、 RF 放射性イミュニティを例外として、比較的素早く適用できる。 採用されたアプローチは、 標準的なシステムで満足な性能を確認するものの１つである。

4. 結論

EMC 問題には２つの見方がある：
  1. 市場圧力を通じた脅威
  2. 競争力のあるマーケッティング・エッジを作るための好機
このプロポーザルは、前者に打ち勝ち、また後者の利益を得るための扉を、 関係する企業のために開いただろう。

我々はいくつかの地域的な公的団体からの このプロジェクトへの出資の約束を受けているが、 これは産業界自身からの匹敵する出資に依存するであろう。 関心のある PC 製造業者／組み立て業者には、このスキームへの参加の機会がある。 これに参加し、徐々に作成される試験結果のデーターベースと 必要な援助へのアクセスを得るためのコストは、 典型的な EMC テスト・ハウスでの１日の試験よりもかなり低い。

参加に関する詳しい情報は：

参考文献

  1. European Commission Guidelines on the EMC Directive, July 1997.
  2. EMC Directive 89/336/EEC as amended by 91/368/EEC, 92/31/EEC, 93/68/EEC.
  3. The RSS approach to achieving EMC compliance, K. Armstrong and J Whaley, EMCTLA Seminar, 27/1/98.
  4. EN55022.

Copyright (C) 1999 Nutwood UK Ltd.

これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2001-11-27