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システムや施設の試験

by Dr Alwyn Finney, EMC Advanced Projects, ERA Technology Ltd

1. EMC 指令

EMC 指令の発表、1996年1月1日からのその適用、そしてその指令の執行のための UK の法令は、大きな、あるいは小さなシステムの製造業者にさらなる思考の糧を与えた。特に、それは新しいシステムの開発、マーケッティング、試験、そして製造に際して、また既存のシステムや施設の更新の計画に際して、その法令の要求を考慮することを製造業者に求めている。この規定の目的は、オペレータがそのシステムを使用に供することが他の機器に対する干渉を引き起こさず、またそのシステム自信が適切なレベルのイミュニティを持つような設計とすることである。

無線以外の製品については、適合性を証明する２つの方法が指令で示されている；整合規格の使用によるもの、そして技術構成ファイル (technical construction file; TCF) の使用によるもの。スタンド・アローンの、認証された試験設備で試験できるような大きさのシステムについては、通常はこれらのアプローチを受け入れられる。しかし、特に現在の規格では卓上形機器や単一ラック・システムの例が示されていることもあり、複雑なシステムや施設の適合性を示すための手法はそれほど明白ではない。写真に示したような、その種のシステムや施設の設計者、製造業者、そしてオペレータのためには、その適合性に関する手法は充分に明確ではない。

2. 欧州委員会 EMC 指令ガイドライン

ここ２年間、欧州委員会 (EC) は EMC 指令の解釈に関するガイドラインを発行してきた。 1997年に公表された最新版は、システムや施設の適合をいかにして証明すべきかという論点を扱おうとしている。これらでは、施設として見られる複雑なシステムと同様、単純な、また複雑なシステムが重視されている。しかし、これら全ては何を意味するのか？

システム：普通の用法では、「システム」という単語は、製造業者が定めた特定の機能を達成するためにある製造業者によって一緒に提供された、いくつかの装置の任意の組み合わせを参照するために用いられる。その装置は物理的に大きく複雑なものとなり得るものの、この最終的なシステムは EC によって１つの装置として扱われる。このガイドラインで導入された重要なポイントは、その「システム」は EEA 内で自由に移動させられるものであることである。これは指令の必須要求に適合するように設計され、また組み合わせられなければならず、その適合性はそのシステムが動作させられるであろうと合理的に予期されるいかなる環境をも考慮すべきである。製造業者がそれらの構成要素がシステムとして一緒に動作させることを意図していると明示している場合に限り、装置の組み合わせがシステムと見倣される。従って、製造業者が TV 放送車の中身が１つのシステムであると宣言するのであれば、そのシステムとしての適合性を証明することが必要となるだろう。
施設：施設の扱いについては、EC のアプローチは施設が固定されているのか移動可能であるのかを考慮するというものである。一般に、施設とは EEA 内での自由な移動を行なえないものであると考えるべきであり、ガイドラインの定義に従えば、これは要求された環境において特定のタスクを遂行するために、共に動作するようにいくつかのシステム、完成製品、及び／もしくはコンポーネントから所定の場所で組み立てられるが、単一の機能単位として市場に置かれることは意図されていないものである。従って、例えば発電所、通信交換センター、原油／ガス・プラットホームは、 EEA 内での自由な移動を行なえない施設である。

3. 複雑なシステムの試験

既に述べたように、システムの試験のための規格の背景にある考えは、それらが卓上形や単一ラックの床置きのシステムであると想定したものである。これは、そのシステムが顧客が必要とする機能を発揮するために必要ないくつかの装置の要素の組み合わせである場合には助けとならない。この場合、そのシステムは 2m×6m の物理的な大きさと、通常の試験所のターンテーブルが扱えるよりも大きな重量を持つかも知れない。このような状況では何ができるか？

実用的なアプローチはその複雑なシステムのワースト・ケースの構成を定義することである。これは、その構成を製造業者と試験所のいずれかによって試験できるように、その大きさを縮小できるものであるべきである。 EMC の観点からは、最大の妨害を引き起こす可能性が最も高そうな構成が定義され、これが試験可能なシステムとなる。あなたは、「どうすればワースト・ケースが得られたとわかるのか？」と言うかも知れない。この質問への簡単な回答はないが、ある期間複雑なシステムを設計していた者として、設計パラメータ、動作速度、基本周波数の高調波の測定値、そして以前に複雑なシステムを使用に供した際の苦情の履歴の全てがワースト・ケースの構成の決定を助けるであろう。

試験可能なワースト・ケースのシステムを一度定義してしまえば、適用可能な規格 (例えば一般規格) を適合性を証明するために使用できる。しかし、あなた ――製造業者―― だけが何が許容できる性能であるかの知識を持っているのであるから、あなたがそのワースト・ケースのシステムの適合基準を規定すべきであることに注意せよ。

4. 施設の試験

施設は整合規格に適合する必要はないものの、それらは依然として指令の必須要求を満足しなければならない。これらの要求の満足に責任を持つのはその製造業者のみではなく、その施設が稼働した際に要求が満たされていることを確認しなければならない、その施設を使用に供する組織もそうである。結果的に、施設を使用に供する組織は、彼らが購入したものを停止させなくても良いであろうという何らかの保証を要求するであろう。

繰り返すが、必須要求の満足のためにどのようにアプローチすべきかについては、規格の一般的な運用はあまり助けとならない。 CENELEC から in-situ 試験規格が提案されているが、次のような理由から in-situ 規格は助けとならない：

その試験手法が良く定義されていない；
システムを設置し、試験し、その後でその施設を使用に供する前に問題を解決しなければならないことを見出すのは高く付く。

複雑なシステムの試験におけるものと同様の方法で、その施設の「代表的システム」を定義し、組み立てることができる。そのような試験手法は、 European Telecommunications Standards Institute (ETSI) 規格 ETS 300 127 で規定されている。この規格では、その施設の代表例となるシステムは、その施設で用いられる可能性のあるそれぞれのシステム少なくとも１つから組み立てられたものであると規定されている。この代表例は使用に供することができるものであり、適合性を示すために試験される。それはその施設の代表例であるので、類似のシステムの追加は動作 EMC 環境を僅かに変えるのみであることが期待される。その施設は指令の保護要求を満たさなければならないだけであるので、この代表的システムは公表されている規格の要求に適合する必要はないという事実に注意すべきである。しかし、規格、例えば EN 55022 のエミッションの要求を満たすことは、その施設を適合させるための、その代表的システムの良い設計目標となり得る。

5. EMC 管理

規制に適合するということは、通常はそれらのシステムを市場に置けるようにエミッションとイミュニティの最小限の要求の組を満足することを意味する。しかし、製造業者はしばしば単一のシステムの適合性を示せば充分であると考えるという罠に落ちる。実際、EMC 適合性を維持するということが、開発サイクルの最終段階において一連の適合性試験を行なうことであることは稀である。適合性の維持は、よりありふれた何千個も製造され得るシステムと同様に、複雑なシステムや施設にも等しく適用される。システムや施設が一度稼働したならばそれが生涯の終りまで適合したままであることの保証を助けるために、 EMC のための戦略、フレームワーク、そしてポリシーを設けるべきである。以下の全ては、通常の業務慣習として定められるべきである：

EMC 管理計画；
設計と製造の管理；
業務手続きに含まれる EMC 管理；
品質保証の一部としての EMC 管理；
変更、更新、及び拡張の管理；
EMC 適合に関するベンダのアセスメント；
EMC メンテナンス手続き。

これらを業務サイクルを通して実施することは、 EMC 問題の管理のための最小コストの選択肢である。

6. 要約

以上では、EMC 管理手続きの適用を含め、複雑なシステムや施設の試験に際して取るべきアプローチの概要を述べた。欧州委員会は、彼らの EMC ガイドラインの最新版において、適合性の証明に際して経験された困難のいくつかを認めた。最後のコメントとして、Warwickshire County Council の Principal Trading Standards Officer である Jim Rackham は、「積極的な行動が必要であり、何もしないことは抗弁を与えない」と言明している。

Alwyn Finney は ERA Technology Ltd (Cleeve Road, Leatherhead, Surrey KT22 7SA, UK; tel +44 (0) 1372 367017; fax +44 (0) 1372 367102) の EMC Advanced Projects のマネージャであり、システムや施設の適合性の達成に関する講師である。彼は、EMC 管理に関する ERA の出版物、「Concept to Completion」 (pub. no. 98/0040) の共著者でもある。

この記事内の写真は BP Chemicals の好意による。

これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を、その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2001-04-22