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EMC 適合のコストの低減

by Eric Tucker, Feedback Instruments Limited

百年前、全無線スペクトラムは、何百万年ものあいだそうあったようなものであった ―― 遠方の雷雨の轟きを除いて静かであった。その後、その変化の速度はほとんど破局的なものとなった。 80年台と 90年台における無線スペクトラムの混雑の増加は、干渉を制限するための何かを行なうことを不可欠とした。欧州においては、その何かは EMC 指令であった。

最初は、一部の人々は、この指令はテスト・ハウス ――その多くが標準化委員会に出席している―― に金を稼がせるための機会に過ぎないのではないかと危惧した。 DTI はそうではないことを示すための非常に信頼できる仕事を行なったが、 DTI 以外の一部はあまり詳しく知らない人々をほとんど救いがたいコストに怯えさせようとした。ここ３年間、一部の人々は EMC に関して非常にうまくやっている。

執行の困難さ

しかし、放射性 RF システムでの再現性のある測定を行なおうとして人生を費してきた人々は、 EMC 指令の執行の困難さについて常に深い疑いを抱いてきた。１つの適合性テスト・ハウスで合格した機器が他では不合格となるのを聞くことがある。これはそれらのテスト・ハウスの良い測定を行なうための能力を反映するものではない ―― それは、単に高周波工学の気紛れの例に過ぎない。

この指令への適合が最も困難な機器が何であるかを示しておく価値がある。多くの PC が依然として適合していないことは公然の秘密であるが、少なくともエミッションの低減のためのある程度の努力 ――指令がなければ行なわれなかったであろう努力―― が行なわれている。面白いことに、最悪の放射性イミュニティの記録を持つ製品は低周波精密測定器である。実際に高周波で動作するシステムの大半は RF を考慮して設計されており、従ってそれをより良く排除できる。実際の問題は、数十ヘルツまでの周波数で動作する精密アナログ・システムによる。それらはしばしば片面プリント板が組み込まれた洒落たプラスチックの箱に入っており、全く明白なことに、RF を考慮して設計されていない。改修を行なう前は、そのようなシステムは大抵は最小の RF フィールドだけで酷い誤動作を生じる。不幸なことに、この種の製品の設計に熟達している設計技術者は、大抵は高周波工学を最も知らない人々でもある。

これらの考察を念頭に置いて、Feedback Instruments は 1995年に自前の「予備適合」試験施設を用意することを決めた ――この用語は全ての製品を「適合性」テスト・ハウスに出す義務があることを誤って暗示する。我々が誰でも知っているように、それは事実ではない。その義務は、製造業者が製品が指令に従っていると自分自身で納得することである。適合性テスト・ハウスの使用は、おそらくはそのための唯一の絶対的に確実な方法であるが、それは強制されるものではない。

性能とコストとの妥協

Feedback Instruments は、その製品の数と多様性がテスト・ハウスへの何回もの訪問と極めて大きなコストを生じ得ることに気付いた。そこで、この企業は、do-it-yourself アプローチによって、当初は可能な最小のコストの施設を作ることに決めた。詳細な調査によって、最小の投資額ではなく、性能とコストとの良い妥協を与えるように設計された試験施設という結果となり、これは健全なアプローチであることが証明された。この企業が最小投資額を選択したならば、その施設は熟練したオペレータが RF 測定の実施に用いた場合にのみ正当な意味のある結果を与えるものとなりかねなかった。運用の観点からは、これは理想以下のものであっただろう。最終的に採用された解決では投資額と使用の容易さとが考慮され、その施設をそれほど熟練していないオペレータに適当なものとした。もし EMC 試験に矛盾があったならば新製品開発中の何日もが失われ得ることを憶えておく価値がある。

Feedback Instruments Ltd の EMC テスト・ルームで試験中のアンテナ

放射性イミュニティ試験を実施して EMC 指令に従うためには、シールド・ルームの使用が必須である。吸収材がない「裸のままの」部屋は、定在波のために極めてはっきりとしたフィールド変動を与える。これは、それを極めて使用しにくくする。吸収材が追加されたならば、良い試験機器と比べれば控え目なコストでこの変動は低減される。必要な吸収材の量に関する意見は一致しないが、チャンバーの半分程度が覆われれば良好な結果を得られる。様々な材料が入手可能であるが、小さい部屋のためにはタイル状のものがほぼ唯一の選択肢である。適度に無響のチャンバーを手に入れたならば、外部の干渉の問題なくエミッション測定を行なえる。

エミッション試験には、Feedback Instruments は、ターン・キー・ソリューションとして供給されているアンテナ、プリ・セレクタ、スペクトラム・アナライザ、及びソフトウェアの組み合わせを用いている。エミッション測定のためのスペクトラム・アナライザ対レシーバの何年にもわたる激しい議論があるが、双方がそれぞれの利点を持っていると言わざるを得ない。そのこつは、あなたのシステムに合わせることである。会社の駐車場でラフで手軽な測定を行なうために高価なレシーバを買う理由はない。

そのイミュニティ・システムは、アンテナ、RF 発生器、増幅器、フィールド・プローブ、そして自動フィールド調整のための GPIB ソフトウェアから成る。その他のトランジェント、及び静電気放電の測定は、出来合いのシステムを用いて実施される。

このシステムは、Feedback Instruments のスタッフと、その部屋をその日に借りて商業ベースで使用する徐々に増えている企業の双方によって、1995年中旬から用いられている。このテスト・ルームを使ったほとんどの人は、EMC 測定を行なうことは、大半の科学や工学のように、単に常識を適用するだけであるという結論に達する。

では、EMC 指令から１年余が過ぎた時、我々はどこにいるだろうか？ EMC に関係する告訴の水準は疑いなく増加するであろうが、我々が知っているような電気機器製造がなくなりはしないであろう。この指令はそのエミッションが何マイルも先で聞こえるような最悪の違反の製品の一部を市場から排除する効果を持ち、ある程度の主権の損失のもとに Wireless Telegraphy Act よりも容易な対処を与える。この指令の要求に対する企業の態度とその満足のための代替手段は急速に熟成しており、今では多くの事業者が彼ら自身の試験施設を持つか、あるいは Feedback にあるような施設を借りており、これによって相当の金を節約している。

これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を、その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2001-12-30