[ Home > 電気製品の EMC／安全適合性 > EMC+Compliance Journal より ]
by Keith Armstrong, Cherry Clough Consultants Ltd, www.cherryclough.com
翻訳: T.Sato
ますます複雑化するエレクトロニクスで全てを制御する傾向にあることから、 機能安全は工学の非常に新しい、また急速に重要性を増している分野となっている。
機能安全に適合する必要がある機器やシステムが、上で列挙した (あるいはこの記事が 2012年に書かれた後で出版された) 製品規格のいずれも使用できない場合、 上で列挙した製品規格全てがそれに基づいて書かれた IEC の機能安全に関する基本規格、 IEC 61508 [3] を適用すべきである。 すなわち、ISO 14971 を適用すべき医用機器/システムを除く全てについてそうである。
全てのエレクトロニクスは電磁干渉 (EMI) の影響を受け、 従って充分な電磁両立性を持つように設計されるべきであり、 2000年 [3] 以来、機能安全上の受容可能なリスクの達成を確かとすることを助けるような形で EMC が行なわれることが求められている。 だが、それは機能安全のための EMC を実際にどのように行なうかを全く述べていない。
残念ながら、EMC への通常のアプローチ ――EMC エミッション/イミュニティ規格に対する試験―― は、機能安全工学のためには不適切である。 それは 61508 への適合への最初のステップ ――セーフティ・インテグリティ・レベル1 (短縮して SIL 1; [1] と [2] を参照)―― に達しているという (EMI が危険なエラー、誤動作、あるいは故障を引き起こさないであろうという) 充分な確信を与えることさえできず、著者はこれを [4]、[5]、及び [6] で議論した。
だが、2000年以来、我々には、 2012年中 (あるいは 2013年) に完全な IS (国際規格) に切り替えられるであろう、 機能安全のための EMC に関する IEC の基本出版物である、IEC TS 61000-1-2 [7] がある。
TS (technical specification) に過ぎないものの、 [7] は 61508 ed.2 (2010) での必須の要求であり、この必須の要求は、結局は、 技術的発展への追従のために順番に再発行される 61508 に基づく機能安全製品規格全てへと 「流れ込む」筈である。
[7] は、SIL への適合の実証に際して妥当なレベルの系統的安全リスクの確信の達成を助けるために、 増強されたイミュニティ試験を含む (だがそれに限られない)、 様々な設計ベリフィケーション/バリデーション・テクニックを用いる。
IEC TS 61000-1-2 [7] は、 2012年中 (あるいは 2013年) に完全な IS (国際規格) として出版されるであろう、 我々が一般に「EMC と機能安全」と呼ぶものに関する IEC の基本出版物である。
IET は、http://www.emcacademy.org/books.asp で Nutwood UK (EMC Journal の出版元) からカラー印刷の書籍として購入できる、 あるいは http://www.theiet.org/factfiles/emc からダウンロードできる、 この出版物に関する包括的なガイドを出版した。
執筆の時点で、機能安全のための EMC に関する国際規格として出版された 基本規格や製品規格はなく、従って使用できるものは [7] だけである。 (著者は、医用機器/システム EMC 規格、IEC 60601-1-2 ed.4 を含む、 [7] とそれに基づく一般規格と製品規格を作成している IEC 標準化チームの、UK 代表である。)
機能安全のための EMC に関して出版された国際規格の欠如に直面し、 機能安全要求への適合を望む、特に工業/プロセス制御産業の多くの技術者は、 このために EMC 試験規格 EN/IEC 61326-3-1 [8]、及び 61326-3-2 [9] を適用する。 その完全な表題を見ればわかるように (参考資料 [8] と [9] を参照)、 それらは機能安全のための EMC の規格であるように見えるが、 残念ながら、これらの表題は誤解のもとである。
61326-3-1 [8]、及び -2 [9] は単なるイミュニティ試験規格であり、 IEC 61508、及び IEC TS 61000-1-2 の双方で管理された機能安全プロセスの中での 使用のみが意図されている。
だが、機能安全のための EMC に関して為す必要があることは 61326-3-x に対する試験だけであると誤って仮定する人々に出会い続けている。
それらは安全関連の、そして安全クリティカルなシステムに関係し、 従って安全上と財務上のリスクは甚大なものとなり得るので、 そのような誤りは実際に非常に深刻なものとなり得る。 IEC 61326-3-1 [8] と -2 [9] の使用における主な問題は、 [3] と [7] のもとでの機能安全リスク管理プロセスの一部となることについて それらは何も言っていないことである。 より小さい問題は、それらは、 (充分なものではないが) [7] の要求である、 その適用範囲内の動作環境で合理的に予期し得る最大のレベルでの イミュニティ試験を要求しないことである。
何年も前、[8] と [9] を作った IEC チームのコンビナーは、 それらは [3] と [7] で管理されているプロセスの一部としてのみの使用を意図していると著者に明言し、 これは 2006年9月27日のベルリンでの IEC 100周年記念会議での Dr Bernd Jaekel と Diethard Moehr (IEC EMC 試験規格に対する責任を持つ委員会である IEC TC77 のセクレタリ) の共同でのプレゼンテーションで、 彼らのプレゼンテーションから取られた次の図のように確認された。
そのコンビナーは、安全関連、 あるいは安全クリティカルなシステムに関係する全ての人は [3] と [7] について知っており、 [8] と [9] を彼らの機能安全適合プロセスにどのように合わせるかを自ずと理解するので、 これに関する情報の 61326-3-x 規格での完全な欠如は問題ではないと請け合った。
残念ながら、2012年の今でさえも、 IEC 61508 と IEC TS 61000-1-2 の双方にも適合することなく、 61326-3 規格 [8] と [9] が単独で用いられるのを見るのは珍しくないので、 彼が誤っていたことは証明されている。
全く同一の問題は 先の図がそれも [3] と [7] で管理されているプロセスの一部となることを示している IEC 62061 と IEC 61511 への適合でも悩みとなっているように見受けられる。
それらも機能安全のための EMC の達成のためには適さない ([10]、[11]、[12]、及び [13] を参照) 様々な自動車メーカーの社内 EMC 規格を ISO 26262 への適合を望む自動車技術者が適用する時にも、 [7] が言明するようにいかなる実際的な量のイミュニティ試験も通常は不充分であることから、 非常に良く似た問題が生じる
また、EMC 指令がそれは安全上の問題をカバーしないと完全に明らかに言明しているにもかかわらず、 機能安全のための EMC のために彼らが為す必要があることは EMC 指令への適合を与えるものとしてリストされているイミュニティ試験規格への適合だけであると 誤って仮定する技術者や安全審査要員に出会い続けている。
機能安全のための EMC は、 EMC イミュニティ試験規格のみによって達成できるかも知れないものを大きく超えた、 標準化の新しい分野であり、 従って独立系安全評価産業がこの新しい最新技術水準に追い付くのに数年を要するであろうことは 疑いないであろう。
安全評価産業が追い付くのを待っているあいだ、 安全関連の機器やシステムの製造業者とインテグレータは それでも [7] で述べられている EMC と機能安全の最新技術水準を用いなければならない。
製造物責任指令のもとでの民事訴訟では相当のペナルティが与えられ得る。 傷害、死、あるいは経済的損失を引き起こしたのが我々の機器やシステムであったという 証明さえなしに、700億ユーロ (加盟国によってはそれ以上) の罰金を課され得る。
機能安全のための EMC の最新技術水準からの逸脱のリスクは、 この非常に不安全な状況について彼らに警告し損ねたならば、 いかなる財務担当重役がこれまでに受け入れたであろうものよりもかなり大きい。
[1] `Functional Safety', http://en.wikipedia.org/wiki/Functional_Safety
[2] `Safety Integrity Level', http://en.wikipedia.org/wiki/Safety_Integrity_Level
[3] BS EN 61508 Ed.2:2010, “Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems, in seven parts
[4] Keith Armstrong, “Including EMC in Risk Assessments”, 2010 IEEE International EMC Symposium, Fort Lauderdale, FL (July 25-31, 2010), ISBN: 978-1-4244-6307-7 (CD-ROM).
[5] Keith Armstrong, “EMC Risk Analysis”, In Compliance magazine, August 2011, http://www.incompliancemag.com/index.php?option=com_content&view=article&id=761:emi-risk-analysis&catid=26:design&Itemid=130
[6] “Including Electromagnetic Interference (EMI) in Functional Safety Risk Assessments”, Keith Armstrong, Safety-critical Systems Symposium 2012, SSS'12, Bristol, UK, Feb 2012, Bristol Marriott Royal Hotel, Bristol, 7th - 9th February 2012.
[7] IEC TS 61000-1-2 Ed.2:2008, “Electromagnetic Compatibility (EMC) - Part 1-2: General - Methodology for the achievement of the functional safety of electrical and electronic equipment with regard to electromagnetic phenomena”, IEC Basic Safety Publication (2008), http://webstore.iec.ch
[8] BS EN 61326-3-1:2008, “Electrical equipment for measurement, control and laboratory use. EMC requirements. Immunity requirements for safety-related systems and for equipment intended to perform safety-related functions (functional safety). General industrial applications”
[9] BS EN 61326-3-2:2008, “Electrical equipment for measurement, control and laboratory use. EMC requirements. Immunity requirements for safety-related systems and for equipment intended to perform safety-related functions (functional safety). Industrial applications with specified electromagnetic environment”
[10] K. Armstrong, “Why EMC Immunity Testing is Inadequate for Functional Safety”, 2004 IEEE Int'l EMC Symposium, Santa Clara, Aug. 9-13 2004, ISBN 0-7803-8443-1, pp 145-149
[11]“EMC for the functional safety of automobiles why EMC testing is insufficient, and what is necessary”, Armstrong, K., IEEE International EMC Symposium, Detroit, MI, 2008.
[12]“Why increasing immunity test levels is not sufficient for high-reliability and critical equipment”, Armstrong, K., IEEE International EMC Symposium, Austin, TX, 2009.
[13] W. Grommes and K. Armstrong, “Developing Immunity Testing to Cover Intermodulation”, IEEE 2011 International EMC Symposium, Long Beach, CA, August 15-19, ISBN: 978-1-45770810-7
これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。
Last update: 2012-06-03