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翻訳: T.Sato
製品会議において、コンプライアンスに話が及ぶと議論が紛糾する。 おおまかなコストが計算され、あなたは その金はマーケッティングのために使った方が良いのではないかと尋ねられるかも知れない。
しばしば商業における税金であるかのように見なされる 「コンプライアンス・エンジニアリング」は、 潜在的には合法性への道を大きく超えたものであるが、 少なくとも EMC と安全に関しては往々にしてそれだけのものであると考えられる。
軍事、航空宇宙、そして自動車産業は、製品の実際の信頼性と頑丈さを向上させるために 常に「コンプライアンス・エンジニアリング」を使ってきた。 今日、このコンピテンスは全ての市場のために使用でき、 コンプライアンス・エンジニアは民生セクタの予算の制約に慣れている。 我々は、単に証明書に金を払うだけではなく、コンプライアンス・エンジニアリングから いかにして実際の利益を得るかを産業界に教えなければならない。
コンプライアンス・エンジニアは、 より多くの製品の種類と使用条件を見ていることを含めて、 純粋な機能設計エンジニアのそれよりも 製品の安定性と頑丈さに対するより良い全体像を持つ。 彼らは、信号劣化や熱的不安定性などのような誤動作の原因を頻繁に同定し、 除去するであろう。
コンプライアンス・エンジニアは多くの設計上のエラーを熟知しており、 あなたの主治医が水痘を見分けられるようにそれらを見分けられるが、 それにもかかわらず、それらのエラーは 通常はその全体像を見るためには製品に近すぎる製品エンジニアを当惑させることがある。
来年のこのジャーナルを埋めるのに充分な現実の例があるが、 まず製品のコンプライアンスの無視はビジネスを台無しにする道であることを、 そして製品の機能の向上のためのコンプライアスのための設計は 競合者を押し退ける道であることを証明する２つの例を示す。
以下の例のいずれにおいても、製品は「目的に不適合」であった。 法的に必要であると見なされる全ての試験と 認められる水準のコンプライアンスに合格しながら、 「目的に不適合」となることはあり得る ―― これは、製品の動作環境の不充分な調査や ユーザーの期待を考慮に入れないことの結果として生じ得る。 規格への適合は法律からの免責を与えないので、 あなたの製品が「目的に適合」することを確認すること ―― コンプライアンスには他の理由はないので、 そのアドバンテージを得て競合相手に先んじること。
70年台、EMC が関心を集め始める前、 ある有名なメーカーがラボ用のチャート・レコーダを提供していた。 そのレコーダは魅力的に宣伝された能力を持ち、素晴らしく見え、 それに見合った価格が付けられていた。 そのレコーダは恒温室に設置され、温度と湿度を記録するために用いられた。 残念ながら、それは周辺の電源が切られた夜にのみそれを信頼できる形で行なった。 その結果、２週間後にその印字ヘッドが乾くと、その機械自身の電源が切られた。 そのメーカーは、その製品が既に廃棄されているので それが不可能となった４週間後になって、交換用のプリンタ・ヘッドのために連絡を取った。 その製品は当時の法的な要求に適合すると主張されていたが、 メーカーはそれを「目的に適合」させるための「もう１マイル」を進むことができなかった。 彼は最小限の必須のコンプライアンスのために金を無駄にしただけではなく、 その開発全てを台無しにした。 製品をスクラップとするコストと比較して、 適切なコンプライアンスのためのコストは大したものではない筈である。 今日では、製品を競合相手よりも先に市場に出さねばならず、修正のための時間はない。
あるラボ用機器のメーカーは、 その最も重要な信号出力を内蔵のスイッチ・モード電源のエミッションで汚染した結果、 競合相手にビジネスで敗北することとなった。 残念な点は、このメーカーは EMC に時間を費しており、 その電源について妥当な仕事をしていたことである。 彼らは、信号ケーブルを近傍界 EMI が直接結合するように電源の周りに引き回すようにした 後の方での設計変更の結果として、その機器を駄目にした。
「コンデンサをいくつか追加すれば EMC に合格するだろう。」 私は幾度この種のコメントを聞いただろうか？ EMC を正しく扱っていない軽率なアプリケーションは機器の機能性を損ない得る。 私が考えるところ、コンプライアンス・デザインは、 合法的な製品を作るのみではなく取り引きのためにより良く機能することが重要であり、 さもなくばコンプライアンスは永久に人気がないままとなろう。 幸い、正しく適用されたコンプライアンス・デザインは、 製品の性能をしばしば、また有意に改善する。 僅かな余分な労力が大きな利点をもたらし得る。 割高な製品においては、顧客はそれを期待するであろう。
製品が動作し、 あるいはコンプライアンスの側面に関連して用いられる方法についての慎重な考慮は、 その使用をより好ましく、あるいはより扱いやすくする。 この良いコンプライアンス・エンジニアリングについての人間的な側面は、 安全、EMC、そして環境の分野で一般的である。 今日、製品設計者は１つの製品を その能力、年齢、あるいは欠点にかかわらず多くの人々にとって便利にしようとするので、 コンプライアンスの側面はさらに重要になるのみである。
全ての機器設計において、我々は、機能性を向上し、 機器の使用の望ましくない帰結を低減しようとする。 電子製品設計において、我々は必要な情報を伝送経路に閉じ込めようとし、 それは正しい信号バランス、遮蔽、そしてインピーダンス整合が信号伝送を改善し、 歪みと望まれないノイズのピックアップを低減することへと繋がる。 これらの特徴が通常は法的コンプライアンスを助けることは、 おそらくはそれほど明らかではない。 そのような手段が取られない限り機器が試験に合格しそうにないことを示すのは、 通常は EMC 技術者である。 もし製品技術者がこのアドバイスを受けたならば、信号対ノイズ比の改善を熟慮すること。 標準インターフェース方式が無視されることがいかに多いかに驚かされたことがある。 今日の大抵の信号通信は大量の情報を運ぶので、 「ボックスからボックス」へのこの貴重な情報を保護し、 他のチャネルへの漏出を防止することが重要である。
全てのコンプライアンス・デザインを 望んだものと望まないもののあいだの障壁として見るならば、 機能性とコンプライアンスとの繋がりを見るであろう。 人によっては、EMC と環境を多少の関係があるものと見倣す。 ここでは安全の説明の必要はない。 EMC と環境の悪い設計は裸の銅線を水の中で用いる機器を設計することと等しい ―― それは動くかも知れないが、いつまでだろうか？
そのメッセージは、収益の増加、損失の低減、あるいはより大きな市場という形で コンプライアンスを正当化できないならば、 あなたのボスは最も悪い見解を持つだろうということである。 ここで、好まれる上位の議論を示す：
上のものは明らかに見えるかも知れないが、 ボスに呼ばれた時にはそのような主張はあなたの念頭にはなく、 ネガティブな弁明に頼ることになるだろう。
告発の可能性が年々増大しているとしても、罰金と収監の脅しは非常に効果的ではない。 我々は脅しに反応せず、罰金を狭量で懲罰的なものと見倣す。 コンプライアンス・エンジニアリングが製品の価値を上げることを知って 製品を設計した方が良く、そうすれば我々はその義務を痛み無く行なうことだろう。 UK において、適合のためのインセンティブを与えるよりも、 僅かな不適合についてもペナルティを課すように脅すことは、不可解でもある。 それは、勿論誤っている。
もしコンプライアンスを支持するネガティブな主張を与えることを考えるのであれば、 特に安全を考えている場合、 最良のネガティブな主張はポジティブの衣をまとっている。
安全コンプライアンスに全く金を費さず、 この製品が何千人もの人に販売されて商業的には大成功だったと仮定しよう。 もしそれが誰かを殺し、あるいは傷付けたならば、何が起きるだろうか？ そのユーザーが何らかの安全上のアドバイスを無視し、 あるいは全く愚かなことをしたと主張し、 おそらくは証明することさえ常にできるであろう ―― あなたは罰金を払うかも知れないが、それだけで全てが済むだろうか？ 違う。 地方紙の１つの記事でさえも、一晩であなたの評判を台無しにできる。 製品の成功が大きくなれば、誰かが不愉快な経験をするリスクも高くなる。
Payne の法則； 「X をするような間抜けがいるかも知れない」とあなたが言ったことがあるならば、 誰かがそうするだろう。
航空宇宙、民生電子、そして通信を跨いだ 25年のコンプライアンス・エンジニアリングの後での私の見解は、 商業的な立場からはコンプライアンス・エンジニアのスキルはあまり用いられず、 多くの製品技術者はコンプライアンスの目的を失い、 主に適法性を求めているというである。 これは、「もう１マイル」のためにも重要である。
ここで、コンプライアンス・エンジニアが問題の解決を助けるための 考えとガイダンスを与えることによって寄与できる最後の例を示す。
我々は、携帯電話基地局の安全性について多く聞いている。 一方、特に子供の親達は、家や学校の近くの基地局について懸念している。 これらの子供達は携帯電話を持ってはいないのであろう。 少なくとも親達にとっての驚きは、携帯電話のユーザーが基地局の近くにいるならば、 その電話が送信しなければならない電力は大幅に低減されて電話を安全にするという 単純な事実である。 電話の使用者は、 電話のアンテナの「近傍界」 ――頭部への結合は効率的になる―― にいるが、 基地局の「遠方界」 ――身体への結合が効率的ではない―― にいる (1.8GHz においては、これはおおよそ 3cm の隔離である)。
良いコンプライアンス・エンジニアリングは保険よりも遥かに良い； 保険は事故を防止しない。 さあ、売り込みに出かけよう。
これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。
Last update: 2004-08-01