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悪魔は細部に宿る

翻訳: T.Sato

外がこの季節の夜の白いブランケットで覆われている中、 私が暖炉の炎の傍でこの記事を書いているとき、 電磁環境適合性とそれに関連する問題は イギリス人的脅迫観念 ――天候―― に影響され得ると思い浮かんだ。 これまでに、 EMC は EN61000-X-X の細かい点を議論しながら物事を働かせるだけのものではなく、 安全に直接的な影響を持つことを示すいくつかの状況が発生していた。

我々の事業は、大半の人が知らない、 煙突や煙道からのダストのサンプリングのための科学機器の設計と製造である。 これは、大半の人が簡潔な説明を要求するであろう、 複合的な訓練を必要とする主題である。

この写真は、彼らが試験している煙突からの粒子状排出物を調べるために ダスト・サンプルを採取している、40年以上前の先駆的な研究者を示している。 彼らはそれに含まれているダスト粒子を採取するために 煙突にノズルを挿入してガスを流出させているが、 これは当時の保護覆いが 今日のものよりもある意味で洒落ていたことも明らかに示している。 明らかにこの作業は気の小さい人や座業気質の人向けのものではなく、 足を踏み外せば最期ともなり得る。

煙突から放出されるダストの量を示す代表的なサンプルを採取するためには、 ノズルを流れるガスの速度は煙突を昇っていくものと同一 ――すなわち、等速―― でなければならない。 この達成は相当のチャレンジを意味し、 それに失敗して試験をやり直さなければならなくさせるのは極めて容易である。 この写真とは異なり、今日では我々は試験をガイドし、また測定を行なうための、 ハンドヘルド・コンピュータやその他の電子機器を持っている。

1. 我々は煙突から落下したサンプリング・チームのメンバーを救出しようとしていた 消防隊長からの電話を受けた。 彼は他のチーム・メンバーが答えられなかった 我々の機器のいくつかの点を知りたがった。 その電話は、彼が低血糖症、要するに血糖値が下がり過ぎていたことを漏らした。 問題の個人は坑道と煙突の双方でのダスト・サンプリングに多年の経験を持つ 明晰な人であったので、これは我々を悩ませた。 関係者全員による結論は、それは「理由がわからないもの」だというものであった。 この事故は専用のヘルプ・ラインを設けるように我々を説得した。

2. Health and Safety Executive からの手紙が、 確実に致命的なものとなるであろう高さの煙突から 感電によって人が落ちそうになったことを我々に伝えた。 その含意は、我々の機器に責任があるというものであった。 我々の機器は 110V センター・タップ付き単相電源で駆動され、 130V を超える電圧ではそのスイッチは切れて 双方の相のリレーによってそれ自身を電源から切り離し、 それは 415V までの入力に耐えることができる。 そのケーブルは BS4343 コネクタを用いた可撓外装のものであり、 4.5mm 厚の金属の箱とともに組み立てられていた。

   調査によれば、その事故はそのチームが機器を梱包して煙突から降ろしている、 その機器が切り離されている時に発生した。 その人は癲癇を患っているものと診断されたが、 若くて元気の良い、健康な人にしては珍しく思われた。 ダスト・サンプリングのみではなく、 個人的な飛行機操縦免許でも問題とされることから、 これはその当事者にとってはダブル・ブローであった。 その時の天候は、無風で、気温は氷点をかなり下回っていた。 この段階で、その事故には単純な原因はなかったとして役人は興味を失ない、 我々は完全に混乱させられたままとなった。

   それから数日後、著者が有名ブランドの真空掃除機を使っていたところ、 そのアルミニウム・パイプからの非常に印象的な、予期しない花火状のものが見られた。 調べてみると、他方を結合できるように一方がフレア状になっている箇所に プラスチックのライナーがあった； 少し実験したところ、意図的にこの効果を発生させられた。 そのチューブは保持され、そのユーザーの抵抗が静電気の発生を効果的に抑止するので、 通常はこれは発生しない。

   問い合わせはその事故の時に機器がロープと滑車で降ろされていたことを示し、 これは金属であったと請け合われたものの、我々はそれを借りて調べてみた。 ローリング・ベアリングの付いたしっかりしたもので、 そのローラーはステンレスで、ベアリングの残りの部分はプラスチックであった。 その滑車と本体とのあいだの静電容量は数百ピコ・ファラッドであり、 我々が発生させることができた範囲、 そのベアリングを横切る 25kV に対しては素晴らしい絶縁が維持されていた。 ポリプロピレンのロープと組み合わせると、 それは素朴な、驚くほど効率的な摩擦発電機を形成した。 その事故の記述から考えると、 その人はそのロープと滑車の彼の頭を通した放電に影響された可能性が最も高かった。 控え目な見積りで 1/2 ジュールのエネルギーが蓄積されており、 これは心臓の、そして脳の機能の変調を引き起こすのに充分なものである。 これを試してみることはお勧めしない。 その滑車とブロックは容易にこの再発をなくすように変更され、 我々が知る限り、その人は今もダスト・サンプリングや飛行を続けているが、 同時にではない。

3. あるサンプリング・チームからの技術的な問い合わせの電話が、 彼らのメンバーの１人が 我々の機器の重い部品を落として足を怪我したという事実を知らせた； 痛ましいことであるものの深刻なものではなく、 そのチームはこれをちょっとしたジョークとして扱っていた。 私はその人と話して、彼は補聴器を使っており、 煙突を登っている時に非常に大きな雑音に驚かされて 彼が運んでいた物を落としてしまったことを見出した。 気圧が異常に高い、穏やかな快晴であった。 しかし、その時刻、日、天候、そして地域は最初の事故と同一であった。 その補聴器は製造業者によってチェックされており、 その人は携帯電話がそれに問題を起こしたことはないと請け合った。

   では何が起きたのか？ 我々の好奇心が呼び覚まされ、我々は可能性のある原因の調査を開始した ―― 最もありそうな犯人は高出力 RF 発生源であろう。 その施設にはそのような機器はなく、我々は意識を遠くまで広げた。 普通の RF 放射器は調べ尽くし、 我々は航空管制マップを調べてツアーに出かけた。 かなり離れたところに、数百マイルの範囲の航空機を追跡する 比較的新しい長距離レーダー設備があった。 それらは、UHF 周波数帯で動作する、 音声帯域のパルス周期のパルス・レーダーであった。 足を怪我した人にその飛行場に来て何が起きるかを見るように頼み込んだ ―― そのレーダーが動作するとすぐに、 その補聴器のスイッチを切らなければならなかった。 パイロットらとの議論は、それは彼らの無線交信にも問題を与えており、 彼らはそれに慣れることを学んだところであるということを示した。 その事故が起きた時の天候は温度逆転を示しており、 その条件ではその周波数は反射され得る。 その後の同様な天候に際して、その煙突の上でのパターン測定は 数百ボルト／メートルのフィールド強度を示した。

   最初の事故はインシュリン・ポンプへのこの発生源の干渉によるものであり、 その製造業者は曝された干渉信号のレベルを聞いて非常に驚き、 そのポンプがその高いフィールド強度と周波数で影響を受けたという 彼ら自身の試験結果を示した。

   これは、いかに真面目な設計者であっても、 全てのシナリオを予期することはできないことを示している。

4. 機器の同一の部分が修理のために送り返され、 その度に同一のデバイスが交換され続けていた。 それを１つの施設だけで使用していたその顧客と議論すると、 その問題はその機器がその施設の新しい部分で使用された時にのみ 発生していたようであり、 そのユーザーは何が起きているかについての見解を持っているようではなかった。 視察は新しい煙突が 400kV 電力線と同じ高さにあることを示し、 そのサンプリング・ガントリー上の片側にいる時に下降気流が卓越風となり、 その架空ケーブルは強風のあいだ我々の方へ動いた。 そのサンプリングは 3.5m のプローブを必要とし、 その電圧では沿面距離と空間距離は全く異なった意味を持つ。 私が彼らの安全監督官に煙突の上に蛍光管を持って行かせ、 彼がガントリーの上に立った時にそれが実に明るく光り、 彼が顔色を変えるまでは、 彼らにそのリスクを理解させるのには若干の困難があった。 彼らは今は別の箇所からサンプルしている。

5. Health and Safety Executive からの別の電話は、 幸いにして重大なものではなかったものの、 サンプリング中に我々の機器から 繰り返して感電を受けた人がいることを明らかにした。 何故企業はこの種の問題が生じた時に我々に連絡しないのだろうか。 これが起きた場所の視察は、非常に現代的で清潔な設備を示し、 屋内のサンプリング・ポイントに欠けているものはアームチェアだけであった。 詳しい調査は、そのサンプリングが静電集塵器の近くで、 電荷を非常に良く伝導させる高温ガスから行なわれていたことを示した。 その感電はその集塵器からのものであり、 それは我々の機器を電源から切り離して実演するまでは信じられなかった； 興味深い。

6. 夜中に電気アーク炉からサンプリングしている時に、著者に面白い状況が起こった。 我々のヘルメットのランプは虫を引き寄せ、これは充分に悪い。 虫は蝙蝠を引き寄せ、 蝙蝠は虫を捉えるための手頃な食事場所として我々の耐熱服にぶらさがった。 このチャーミングな保護動物は鋭い歯を持っており、脳炎や狂犬病を媒介し得る。 解決は、虫を引き寄せないルビー・レッドのランプを使うことであった。 これは EMC 問題だろうか？ 放射する際には、それを正しい周波数で行なうのが賢明である。 それとも、これは不明瞭な形での感受性問題であろうか？

私の専門的な証人としての仕事は、企業や役所は ますます最初の選択として訴訟を行なうようになっていることを示している。 上記の状況は、エンジニアリングにおいては 悪魔が常に細部に宿ることをまざまざと示している。 しかし、我々はそれらを 20の知識 ――20 の後知恵―― のもとで見ている。 議論を可能とした鍵は、全面的な、徹底したリスク・アセスメントである； 地平線の彼方のレーダー・システムを警戒しながら煙突に登るように 誰かが提案するものと期待するのは合理的であろうか？ また、夜の蝙蝠の問題はどうだろうか？ 弁護士達は「充分な注意 (due diligence)」の定義の法廷での決定を拒否し、 これはこのアプローチが実際により安全な作業環境を作るかどうかを疑わせる。 みぞれが近付いているときには、その細かい点は人々の意識の最も上にはない。 弁護士へ； 技術者との議論は泥の中を転げ回る豚のようなものだということを憶えておくこと： 彼らはそれを楽しんでいる。

これは、EMC+Compliance Journal に掲載された記事を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.com (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2001-11-30